養育費の実務運用の問題点(過大な養育費約束)

現状の離婚に関する実務の運用の問題点を指摘します。
問題がある以上、将来的には変化することが期待されます。問題点を指摘していかないと変化は起こりません。また、思わず早期に変化の利益を享受できるかもしれません。納得がいった方は是非、主張していってください。

養育費について、現状の裁判所の一般的な運用について、問題点は多々ありますが、今回は過大な養育費を約束してしまった場合です。

養育費の額は、離婚に際して決めることが多いです。裁判所を介しない夫婦間の合意で決まることが大半ですが、家庭裁判所での調停で決まることも多くあります。

いずれの場合も当事者が納得した額で決まります。ですから、離婚の際の力関係や相場観に対する知識不足から、過大な、つまり支払い困難な養育費を約束してしまうことがあります。

家庭裁判所の調停であれば、いわゆる養育費の算定表に基づくことが基本ですが、やはり当事者が算定表を超えた額を納得してしまった場合、過大な養育費の額で決まってしまうことがあります。

通常の金銭の支払いの義務であれば、万が一支払い困難になった場合は、破産という制度があって、多くの場合、支払いをまぬかれることができます。

ところが、養育費の場合は破産手続きをしても、非免責債権といって支払い義務を逃れることができません。確かに、適正な額の養育費であれば、破産手続きをしても支払い義務を逃れられないというのは妥当な考えだろうと思います。しかし、過大な、そもそも支払い困難であったり、著しく困窮してしまうような養育費を約束して、その支払いを滞納してしまった場合にまで、その状況を解決する手段がないというのは著しく不合理です。

また給料差押えについても、通常であれば手取りの4分の1ですが、養育費の場合は2分の1ですので、たとえば給料の手取りの半額以上の養育費を約束してしまったら最後、どんなに生活が苦しくても給料の手取りの半額をとられ続け、破産でも逃げられないということになります。

これは、自分が困窮しない前提の中で、子どもに自分と同程度の生活をさせる義務である養育費の法的趣旨からして明らかにおかしな結論です。そもそも、破産手続や給料差押え手続きで、養育費が特別扱いされているのは、養育費の額が適正であることが前提のはずです。

ですから、法的には、当人が約束した養育費=法的な養育費とみるべきではなく、養育費算定表に基づく適正な養育費=法的な養育費であって、それを超える部分は破産手続きや給料差押え手続きでの特別扱いはしないということを考えるべきでしょう。


弁護士紹介

弁護士柏木研一郎

弁護士 柏木 研一郎
マイタウン法律事務所東京事務所所長弁護士。男性の離婚事件を数多く扱う。
相談可能場所:東京二俣川金沢文庫茅ヶ崎青葉台新横浜

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