「仕事から帰ったら、妻子がいなくなっていた――」
離婚の話が浮上するとき、決して珍しくない光景です。
令和8年4月、離婚後の共同親権の導入などを柱とする改正民法(家族法改正)が施行されました。では、この法改正によって、いわゆる「子連れ別居」の扱いはどのように変わったのでしょうか。
1. 共同親権下における法改正のポイント:無断の居所変更に伴うリスク
共同親権下(婚姻中、または離婚後に共同親権を選択している場合)において、子どもの引っ越し(居所の変更)などの重要事項は、原則として父母が共同して決めなければならないこととされました(民法824条の2)。
- 単独で決められるのは「急迫の事情」があるとき
DVや虐待からの避難など、子どもの利益のために「急迫の事情」がある場合を除き、他方の同意なく一方的に子どもを連れ去ることは原則として認められません(同条1項3号)。 - 「人格尊重・協力義務」の明文化
また新法では、「父母は互いに人格を尊重し協力しなければならない」という規定も新設されました(民法817条の12第2項)。
そのため、正当な理由のない一方的な子連れ別居は、親権侵害や尊重・協力義務違反とみなされ、場合によっては相手に対する損害賠償義務(慰謝料)が発生するリスクがあります。
2. 裁判所の実務において「連れ去った者勝ち」の傾向は解消されるのか?
法的な義務やリスクが明確になった一方で、実務において劇的な変化が起きるかというと、そこは慎重に見る必要があります。
裁判所が「どちらを監護者(実際に引き取って育てる親)にするか」を判断する場面において、「連れ去りの態様(やり方)」は、あくまで考慮要素の一つに過ぎないという実態は変わっていません。
従来の実務でも、 無断での連れ去りが裁判所でマイナスに評価されることはありました。しかし、それ以上に「現状維持・監護の継続性」が優先される傾向があり、連れ去り行為そのものの悪質性はそれほど重視されてこなかったという側面があります。
今回の法改正により、こうした裁判所の実務や運用のあり方がどのように変化していくのか、今後の動向が強く注視されます。
3. まとめ
今回の法改正により、無断での子連れ別居に対する法的なハードルは高くなりました。しかし、実際の監護者争いにおいて、いわゆる「連れ去った者勝ち」の側面が解消されたとは言えません。
もし配偶者に突然子どもを連れて行かれてしまった、あるいは子どもを連れての別居を考えているという場合は、法改正後の最新の実務を踏まえた慎重な対応が必要です。まずは一度、弁護士にご相談ください。
どの手続きを利用すべきか、どのように進めればよいかなど、ご不明な点やご不安なことがございましたら、一人で悩まず、まずは弁護士にご相談ください。個別の状況を詳しくお伺いし、最適な解決策をご提案いたします。



