AIに相談してから来所する方へ ― 弁護士相談におけるAIの使い方

最近、「AIに相談してから来ました」という方が増えています。状況を説明して要点を整理してもらった方、養育費や財産分与の制度をひと通り調べてから来所された方など、事前準備の形はさまざまです。

ただ、今のところは、AIがまとめた内容をそのまま鵜呑みにすると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。AIの進化はとても速く、この記事の内容もいずれ古くなるかもしれませんが、現時点でよく見かける「AIのまとめでズレやすいポイント」を具体的に解説します。

目次

  • AIのまとめが、そのまま使えるとは限らない理由
  • Q. 「相場」は合っているのに、結論がズレるのはなぜ?
  • ズレが起きやすい3つのパターン
  • 相談の前に持ってきていただきたいもの
  • まずは弁護士に相談を

AIのまとめが、そのまま使えるとは限らない理由

AIは、一般的な制度の説明は得意です。「財産分与とは何か」「養育費の相場はどう決まるか」といった基礎知識であれば、大きく間違うことは少ないでしょう。

問題は、その先です。法律相談の実務は、一般論をあなたの個別事情に当てはめる作業がほとんどを占めます。ところが、AIのまとめは「一般論としては正しいが、個別の事情を反映すると結論が変わる」という部分を、断定的に、しかも自信満々に書いてしまうことがあります。ここが、実際の相談で一番ズレが生じやすいところです。

Q. 「相場」は合っているのに、結論がズレるのはなぜ?

養育費や婚姻費用には「算定表」という目安があります。AIに聞けば、この算定表に基づいた金額はそれなりに正確に出してきます。

しかし実務では、算定表の金額がそのまま適用されないケースが多々あります。たとえば、

  • 住宅ローンをどちらが負担しているか
  • 私立学校の学費など、算定表が想定していない特別な費用があるか

といった事情があると、算定表の金額から増減させる必要が出てきます。AIのまとめは、こうした「例外的な調整」の部分をあっさり省略してしまい、「相場はこの金額です」と言い切ってしまうことがあります。相場自体は合っていても、あなたのケースに当てはめると違う、という状態です。

ズレが起きやすい3つのパターン

これまでの相談で気づいた、AIのまとめによくあるズレ方を挙げます。

①「寄り添い」が、実務とは違う結論を導いてしまう

これが、今のところのAIで一番よく見かけるパターンです。AIは、相談者の話に共感し、味方をしようとする傾向があります。一見ありがたいのですが、法律相談ではこれが裏目に出ることがあります。

たとえば、「妻が浪費していたので、財産分与で有利に考慮されますか」という質問に対し、AIが「浪費は財産分与で有利な事情として考慮されます」と、言い切ってしまうことがあります。

しかし実務上、財産分与は「夫婦で協力して築いた財産を、原則2分の1ずつ分ける」という考え方がベースになっており、一方の浪費があったからといって、それだけで簡単に取り分が増えるわけではありません。浪費した分を「財産の毀損」として財産分与において考慮できる場合もありますが、それには浪費の時期・金額・使途等を具体的に立証する必要があり、主張が認められるハードルは決して低くありません。

AIは「あなたの言い分は正しい」という方向に説明を寄せがちですが、実務は必ずしもそちらを向いているとは限りません。ここにズレが生まれます。

②「法改正」の情報が古いことがある

法律・裁判所実務の情報は改正が多い分野です。特に共同親権に関する令和8年施行の改正のように、施行前後で実務の扱いが変わる論点は、AIが情報を混同して説明してしまうことがあります。

③ 協議・調停・裁判、それぞれの手続きの違いが曖昧なまま説明される

「離婚するにはどうすればいいか」という質問に対して、協議・調停・裁判の違いをきちんと整理せず、まとめて回答してしまうケースが見られます。しかし、今どの段階にいるかによって、取るべき対応も、注意すべきリスクもまったく異なります。

相談の際にお持ちいただきたいもの

相談をスムーズに進めるために、次のものがあれば整理してお持ちください。

  • 婚姻期間、お子さんの年齢、現在の別居・同居の状況
  • 収入資料(給与明細や源泉徴収票など)
  • 相手方とのこれまでのやり取り(メール、LINEなど)
  • これまでの経緯の時系列表

最後の時系列表は、AIに作ってもらったもので構いません。「いつ何があったか」を整理する作業は、法的な判断が入り込む余地が少なく、AIが得意とする領域です。①で触れたような「寄り添いによるズレ」が起きにくいのは、こうした事実の整理作業です。逆に、「この事実からどういう結論になるか」という部分は、AIに任せきりにせず、実際にお話をうかがいながら、こちらで確認させてください。

まずは弁護士に相談を

AIで調べていただくこと自体は、状況把握の助けになりますし、決して無駄にはなりません。大切なのは、「どこまでが自分のケースにも当てはまり、どこから確認が必要か」を一緒に見極めることです。AIの精度は今後さらに上がっていくと思いますが、少なくとも今の段階では、この「見極め」の部分に人の目を通していただくことをおすすめします。

紹介がなくても、もちろん大丈夫です。事前に調べた内容や、疑問に思った点があれば、そのまま持ってきていただければ、そこから具体的にお話しできます。

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