離婚を求める場合、慰謝料を払わないと離婚できないのか

弁護士磯田裕之 慰謝料

「離婚したいけれど、慰謝料を払わないと離婚できないのだろうか…」

「相手から高額な慰謝料を請求されて困っている…」

離婚に際して、慰謝料の問題は多くの方が不安に感じる点のひとつです。慰謝料を支払う必要があるのか、支払わないと離婚自体が認められないのか、といった疑問は尽きません。

本記事では、離婚における慰謝料の基本的な考え方から、慰謝料を支払わなくても離婚できるケース、慰謝料を請求された場合の対処法まで、弁護士が分かりやすく解説します。

そもそも慰謝料とは?必ず発生する?

まずご理解いただきたいのは、「離婚=慰謝料発生」ではないということです。

慰謝料とは、相手方の有責行為(不倫やDVなどの離婚原因となる行為)によって被った精神的苦痛に対する損害金です。

したがって、慰謝料が発生するのは、主に以下のようなケースです。

  • 不貞行為(浮気・不倫)
  • DV(ドメスティック・バイオレンス)・モラハラ
  • その他、婚姻関係を破綻させた有責行為

逆に言えば、上記のような有責行為がない場合、例えば「性格の不一致」や「価値観の違い」といった理由で離婚に至るケースでは、原則として慰謝料の支払い義務は発生しません

【本題】慰謝料を払わないと離婚できないのか?

結論から言うと、慰謝料を支払わないと離婚できないわけではありません。

ただし、離婚の進め方、特にお互いの話し合いで離婚を目指す場合には注意が必要です。

協議離婚・調停離婚の場合の考え方

協議離婚と調停離婚の場合は、相手方と合意ができなければ、離婚ができません

そのため、相手方が「慰謝料(または解決金)を支払わないなら離婚しない」と言ってきた場合、あなたが早く離婚したいと考えるなら、ある程度の金銭を支払うことで合意に至る、というケースは実際にあります。

「解決金」を支払うという選択肢:必ずしも「損」とは限らない

ここで重要なのは、たとえ法律上の慰謝料支払い義務がないと思われる場合でも、金銭を支払うことが必ずしも「損」とは限らないという視点です。

離婚手続きは、以前の記事でもご説明したとおり「協議→調停→裁判」と段階を踏んで進むのが一般的です。協議や調停で合意に至らなければ、最終的には裁判で争うことになります。裁判に移行すると、解決までにさらに多くの時間、費用(弁護士費用など)、そして精神的な負担がかかります。

こうした点を考慮すると、裁判に進んで長期化する事態や、追加の弁護士費用を支払う可能性を天秤にかけた結果、協議や調停の段階で一定額の解決金を支払って早期に離婚を成立させる方が、時間的・経済的・精神的な負担を総合的に見て軽減できると判断できるケースもあるのです。

このように、有責行為の有無にかかわらず、早期解決のための「解決金」を支払って離婚するというのも、状況によっては有効な選択肢の一つと言えるでしょう。

弁護士磯田裕之

弁護士 磯田 裕之
マイタウン法律事務所所属弁護士。男性の離婚事件を数多く扱う。

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