「妻とはもうやっていけない」「離婚するしかない」と考えたときに、どのようなことを考え、どのような行動をとるべきでしょうか。
こちらが浮気をしている場合と、そうでない場合とで大きく異なります。今回は、こちらが浮気をしている場合を説明します。
1.基本的な考え方
こちらが浮気をしている場合、現在の法律のもとでは、①原則として、あなたの望みはかないません。
また、仮に離婚することができたとしても②経済的にはかなり過酷な状況に陥る可能性が高いといえます。
ですから、「離婚したい」というあなたの気持ちが、より具体的にはどういうことなのかしっかり考え直し、「離婚をする→つまり公的に戸籍を妻と別にする」ということに、どこまでこだわるべきか、あらためて考える必要があります。
2.①原則として離婚できない
専門用語で「有責配偶者の離婚請求」と言われるものになります。有責配偶者から離婚を請求してきた場合は、裁判所は離婚を認めてくれません。
例外としては、こちらの浮気前に相手が浮気していた、すでに別居していた等の状況があるときや、浮気後に相当長期間(7年以上)別居しているときは離婚が認められる可能性があります。
ということで、上記の事情がない場合は、妻が離婚に同意してくれないと離婚できません。
もちろん、妻に対して離婚を告げ、「交渉→調停→裁判」と手続きを進めていくことによって、妻が離婚に同意し最終的には離婚できる場合は珍しくありません。ですから、どうしても離婚したい場合は、あきらめずに手続きを進めるという考えもあります。
3.②離婚できても経済的には過酷な状況に陥る可能性が高い
ただ、妻から離婚の同意を得るためには、相当程度高額な慰謝料や今後の生活保障をする必要があります。その水準は、おそらくあなたの生活が成り立つかどうか、ぎりぎりの水準といえます。少なくとも、浮気相手と結婚して、それなりに生活を楽しめる水準になることはないと考えたほうがよいです。
現在の離婚手続きにおける運用上、男側に非がなくても、離婚後の男側の生活はかなり厳しい状況になることが多いです。それに加えて、妻の追加要求に応じるのはかなりの無理が必要です。
例えば、あなたが社長で相当程度高額な年収を得ていたとしても、離婚手続の財産分与で会社の財産も分与対象になる(例えば、会社の純資産の半額等)。それも現金払い。そうなると、借入れをするなりして補わなければならない場合もあります。そのような状況に陥った上で、さらに妻の同意を得るために追加要求ということになると経済的に過酷な状況になりかねません。
となると、そうまでして、離婚という戸籍を抜くことにこだわる必要があるのか、じっくり考える必要があるといえます。
また、妻と別居状況になると、離婚にならなくても経済的にかなり苦しい状況になることも多いです。相当程度の婚姻費用の負担と、家族全員の同居を前提にした住宅ローン等の固定費の負担が同時にくるからです。そうなると、妻と別居状況になるという展開も、場合によっては望ましくないかもしれません。
ですから、妻と離婚したい、その理由が浮気相手と結婚したいという場合は、「そもそも離婚できる可能性は高くない」、「離婚できたとしても、経済的には今と全く違った状況になってしまうことになる」、「一歩踏み出すことにより、最終的に離婚もできず、妻と別居状況という経済的困難が長期間続くことになる可能性がある」ということを踏まえて、浮気相手と今後のことを考えることをお勧めします。
とはいえ、上記のことを踏まえても、「あくまで離婚したい」という方は多くいらっしゃいます。最終的な裁判で勝てる見込みは少ないとはいえ、離婚の交渉、調停、訴訟と続けていくうちに、妻側と条件面で合意に達し、最終的に離婚できることも少なくはありません。
そこで、「あくまで離婚したい」という場合は、手続きを進めていくということになります。
弁護士紹介
弁護士 鍛代 智弥
マイタウン法律事務所所属弁護士。男性の離婚事件を数多く扱う。