離婚においては、複数の問題がからむことが多く、一概にどのような戦略がよいとは言い切れることは多くありません。とはいえ、一つ一つの問題についての、基本戦略を明確にしておくことは、総合的な方針を立てる上では、必須のこととなります。
ここでは財産分与の基本戦略を書きます。
財産分与は、多くの離婚において、最重要の争点になります。たとえば、ある程度資産が形成されていれば、財産分与額は数千万円規模になることも珍しくなく、慰謝料に比べて、額が大幅に多額になります。
純財産額としては、それほど多くなくても、住宅ローンを財産分与においてどのように考慮するのか、妻の実家の土地の上に家を建ててしまった場合、どのように考えていくべきなのか、とても難しい問題になり、油断していると極めて過酷な状況になります。会社や医療法人を経営している場合、その持ち分も財産分与の対象になる場合があります。うまく処理をしていかないと、事業上、重大な危機に陥る場合があります。
財産分与において、分与割合はたいていの場合、2分の1ずつとなります。ただ、収入が高額な場合は、6割なり7割なりの割合を取得できる可能性もあります。2分の1ずつの基本を崩すためには、簡単な主張や証拠提出では、なかなか難しいです。しかし、総額が大きい場合は1割の差は大きな違いになりますので、資料提出できるのであれば、力をそそぐべきでしょう。
ローンを含めた家の権利関係が複雑な場合や、会社等の権利がからむ場合、裁判所の判決で決着すると、とんでもない事態がおこる可能性があります。このような権利関係をデリケートに処理するには、裁判所の判決には柔軟性が不足しています。ですから、裁判官が鋭意、よい解決を望んだとしても、限界があるのです。
それゆえ、強気に言って判決になっても困る場合もありますから、あせらず、かといっておかしな譲歩をすることもなく、最悪の事態を回避すべく、妥協点をさぐっていくことが肝要となります。
弁護士紹介
弁護士 中村 慎司
マイタウン法律事務所所属弁護士。男性の離婚事件を数多く扱う。