未成年の子がいる場合、離婚にあたって、父母のどちらかを親権者に決めなければなりません。
どちらにするか合意できればそのとおりになりますが、合意できなければ、最終的には裁判所が決めます。
裁判所が親権者を決める基準は、最近は名目上は変わってきたといえます。ただ、実際には母親が有利で、今面倒をみている側が有利。つまり、離婚の調停なり裁判中に、母親が子どもと同居している状況であれば、裁判所がこちらを親権者にしてくれる可能性は極めて低いと言えます。
ということから、父親が親権を主張することは極めて旗色が悪いため、親権を要求することを、不本意ながら、諦めさせられることも多くあります。もちろん、最終的には不利な事実も踏まえて色々考えなければなりません。また、本当は自分が親権者にふさわしいと思っていないのに、駆け引きの材料として親権を主張することも賛成できません。
しかし、本気で自分が親権者にふさわしいと考えているのであれば、その主張を貫くべき理由が3つあります。
- 充実した面会交流を確保する。
- 再婚養子縁組による面会交流断絶を防ぐ
- 子どもへの将来の説明
1.充実した面会交流を確保する
今の日本の裁判所は、親権決定を母親有利、現状有利の枠組みで考えています。しかし、多くの国では、その不合理性が認識され、より充実した面会交流を提供できる側を親権者にすべきという考えになってきています。
多くの日本の裁判官も、その流れは認識しています。ですから、あなたの件を担当した裁判官も、親権の決定基準として、充実した面会交流をさせられる者が親権者にふさわしいと考えている可能性もあります。
そこで、あなたが、充実した面会交流計画とともに親権者を主張すれば、母親側も充実した面会交流を提案するという流れになり、最終的に親権を譲ることになっても、初めから親権を諦めた場合に比べ、より父子間の交流を確保できる可能性が高くなります。
2.再婚養子縁組による面会交流断絶を防ぐ
一般的に、親権者が子どもの面倒をみることになりますが、親権と監護権を分けて、たとえば「実際に同居して面倒をみるのは監護権者の母親だが、親権者は父親」ということもできます。
裁判所は、このような方式は諸々の問題があるとして嫌がることもあります。しかし、妻が浮気をした事案等では、妻に親権を譲って離婚した上で、妻が再婚し、再婚相手と子どもが養子縁組すると、妻の再婚相手が子どもの新しい親権者ということになります。その結果、離婚条件で同意したはずの、面会交流の約束がすべて破られてしまっても、有効な手段がなくなることがあります。
これを防ぐには、父親が親権者で母親が監護権者という形にする必要があります。
「離婚と子どもとの同居は諦めても、面会交流は譲れない」、「妻が面会交流に極めて消極的な上、すぐに再婚しそう」、「離婚を強く求めているのは妻で、こちらは離婚しなくても良い」というような場合は、親権の確保(ただし監護権は妻)を離婚条件として提示することも考える必要があります。
3.子どもへの将来の説明
離婚になる場合、母親の養育状況に大きな問題がある場合もあります。「母親に子どもを任せられないから自分が親権を取りたい」、「親権を早々に譲ることは、子どもを見捨てるようで、しのびない」ということも多くあります。
また、母親が子どもに、「あなたは父親に捨てられた」ということ吹き込むかもしれません。そのようなことは、子どもの心に大きなキズを与えます。
このような場合は、徹底的に親権を主張して、最後に裁判所に決めてもらうということもあると思います。裁判所に決めてもらえば、「裁判の中で、あなたが徹底的に親権を主張したが、裁判所の決定でやむなく親権を諦めざるを得なかったこと」が公的な書面として残ります。
将来、あなたが子どもに対して、自分は本気で一緒に暮らしたかったんだということをしっかり説明することができます。このことは、子どもにとっても、大きな意味がある場合もあるでしょう。
弁護士紹介
弁護士 野口 真寿実
マイタウン法律事務所離婚主任弁護士。男性・女性の離婚事件を数多く扱う。