離婚においては、複数の問題がからむことが多く、一概にどのような戦略がよいとは言い切れることは多くありません。とはいえ、一つ一つの問題についての、基本戦略を明確にしておくことは、総合的な方針を立てる上では、必須のこととなります。
ここでは慰謝料の基本戦略を書きます。
離婚において、慰謝料が最も重要な課題になることは多くありません。というのは、慰謝料が問題となるのは、
基本的には「夫婦間での暴力事案」か「浮気行為があった事案」です。
前者の場合、多くの財産があって財産分与の額が大きいため、慰謝料が相対的に小さな問題になるか、そもそも慰謝料の支払い能力がないかの両極になることが多く、いずれにしろ、エネルギーを注ぐべき問題になりにくいといえます。
浮気行為の場合は、浮気をした側が離婚を望んでいる場合は、通常の慰謝料とは異なった考えが必要になってきます。つまり、「いくら払えば離婚してくれるのか」という考え方になってきます。
浮気をされた側が離婚と慰謝料を求めている場合は、慰謝料を払うこと自体が争いようもなく終わってしまう場合が多いです。
ですから、このような事案では、時間をかければかかるほど、男側は婚姻費用の額がかさんでしまって、金銭的に不利になりますので、細かな金額のすりあわせに時間をかけるよりも早期解決を目指したほうが良いといえます。暴力行為をしてしまった場合や浮気をしてしまった場合に、なんとかやりなおしたい場合は別ですが、慰謝料の額を争って長期化するのは実益がなくなってしまいかねません。
また、妻が浮気をして慰謝料請求する場合は、妻との慰謝料交渉が長期化しそうな場合は、さっさと妻の浮気相手からの慰謝料を回収を優先したほうが上策の場合も多くあります。
時間をかけてでも争う場合は、浮気や暴力以外のいわゆるモラハラとか言葉の暴力等の不明確な理由を根拠に慰謝料請求をされた場合です。
このような場合も、メインの争点は妻からの離婚請求を認めるかどうか、ということになりがちです。ただ、こちらも離婚には同意しているが、こちらが悪いという主張にはどうにも納得できないという場合もあると思います。
このような場合は、主張すべきことを主張した上で、自分が慰謝料を支払うべきような行為をしたのかどうかは裁判所の判断にゆだねるというのも手です。
もっともこの方法の場合も、どうしても離婚の結論まで長期化してしまいがちです。結局、婚姻費用の支払い分で経済的には損をしかねません。そこで、慰謝料ではなく、解決金名目で多少支払ってでも、早期解決を目指すことが上策の場合もあります。
弁護士紹介
弁護士 磯田 裕之
マイタウン法律事務所所属弁護士。男性の離婚事件を数多く扱う。