現状の離婚に関する実務の運用の問題点を指摘します。
問題がある以上、将来的には変化することが期待されます。問題点を指摘していかないと変化は起こりません。また、思わず早期に変化の利益を享受できるかもしれません。納得がいった方は是非、主張していってください。
面会交流について、現状の裁判所の一般的な運用について、問題点は多々ありますが、今回は面会交流に伴う負担はどちらが負うべきかという問題です。
この問題についての模範的な回答は、父母それぞれが応分に負担すべきということになります。でも、このような模範解答では、具体的に問題が生じたときには役に立ちません。
よくあるのが、母親が、「自分は父親に会いたくないから、子どもを第三者に面会場所へ連れて行ってもらう。または、面会交流を支援する第三者機関(FPIC等)を利用したい」というような場合です。そのような費用は、応分に負担するべきなのでしょうか?
そもそも、面会交流を実施するのは監護する親、母親の義務です。その義務の履行にあたって、気が進まない事情があるのであれば、その費用は母親が負担するのは当然といえます。
面会交流という子どものための極めて重要なことをするにあたって、「気が進まない」という親の心情を法的機関が後押しする理由はありません。
ところが、このような当たり前のことが実務上、忘れられています。
父親「面会交流したい」
母親「いやだ」
調停委員が何とか母親を説得
母親「●●してくれるのであれば、〇〇の限度で会わせてあげてもよい」
調停員が●●、〇〇の内容を父親に説得
父親は会いたいあまりに、●●、〇〇を受け入れる。
という流れが定着してしまっています。
しかし、どんなに自分の気が進まなくても面会交流を実施するのは監護する親の義務であり、子どもを監護したいというのであれば、面会交流を円滑に実施する責任も引き受けなければならないのです。
ですから、「●●してくれるのであれば」等と言って来たら、「それでは、子どもの監護を父親に任せるということでよいですか」という方向で話をするべきといえます。
もちろん父親側は自分が監護を引き受けられないのであれば、監護を引き受けてくれている母親に対して、面会交流する上での配慮が必要になります。しかし、父親側も監護を望んでいるのであれば、それなら監護は父親に、というのが筋道に沿った考えといえます。
面会交流を円滑かつ豊富に実施できる親こそ監護親にふさわしい、という考え方が実務に早く定着していくことが望まれます。
弁護士紹介
弁護士 藤澤 玲央
マイタウン法律事務所 所属弁護士。男性の離婚事件を数多く扱う。