妻が浮気。慰謝料も取って有利に離婚できる?

妻の浮気が発覚した場合、「もう離婚だ!」と思うのは当然です。原因を作ったのは妻であり、非があるのは明らか。だからこそ、離婚の条件もこちらに有利に進むはずだ、と考えるのも無理はありません。

しかし、現在の離婚法制は、正しいあなたの味方をしてくれません

感情のままに行動してしまうと、「子どもに会えなくなり」「財産の大半を失い」「相手の生活費まで払い続ける」という、到底受け入れがたい結末を迎えることになりかねないのです。そうならないために、まずは冷静に「法的な現実」を知る必要があります。

【現実①】親権:浮気の事実があっても、母親が圧倒的に有利

まず理解すべきは、妻の浮気(不貞行為)と「親権者を誰にするか」は、法律上、原則として別の問題として扱われるという点です。

親権者を決める最大の基準は「子の福祉(子どもの幸せ)」であり、これまでの養育実績が何より重視されます。そのため、主に子どもの世話をしてきたのが母親である場合、妻が浮気をしたという事実だけでは、あなたが親権を獲得できる可能性は極めて低いのが実情です。

さらに、妻が親権者となり浮気相手と再婚した場合、子どもがその男性と養子縁組をすると、面会交流さえ困難になるケースも少なくありません。 皮肉なことに、妻の裏切りが原因で、あなたは愛する我が子を失うという結果に繋がりかねないのです。

【現実②】財産分与:浮気は関係なし。「2分の1ルール」という壁

結婚後に夫婦で協力して築いた財産は、その名義にかかわらず「共有財産」と見なされ、離婚時には原則として半分ずつ(2分の1)に分けることになります。これを財産分与といい、このルールは妻が浮気をした場合でも基本的に変わりません。

もちろん、妻への慰謝料を請求することは可能ですが、それは財産分与とは全く別の話です。慰謝料額以上に、財産分与で失う資産の方がはるかに大きいことも珍しくありません。

もちろん、その財産がすべて預金であれば、それを折半すれば済みます。しかし、住宅ローンが残った家である場合、住宅ローンが夫名義の借り入れであれば、残った住宅ローンは夫だけが負担することになります。残った財産を分けたところで埋め合わせができないことも珍しくありません。

また、会社だったり医療法人だったりを経営している場合、その株式や出資持分も財産分与の対象です。会社の純資産の半分を現金で請求されれば、事業の存続が危うくなるほどの深刻なダメージを受けかねません。

【現実③】婚姻費用:原因が妻でも、生活費の支払義務は残る

離婚が成立するまでの別居期間中、収入の多い側は少ない側に対し、夫婦と子どもの生活費(婚姻費用)を支払う義務があります。その額は、婚姻費用算定表(※裁判所のHPが開きます)というもので概ね定型化されています。

「浮気をして勝手に出て行った妻の生活費まで払うのか」と思うのは当然です。法理論上、浮気をした妻自身の生活費分は請求できないという考え方もあります。しかし、妻が浮気を否定している場合、婚姻費用の手続き(調停など)では、浮気はない前提で決まってしまうことが多いです。仮に妻が浮気を認めていても、妻分は払わなくて良いという理屈は確立した運用とまではいえないので、事実上、普通に婚姻費用を支払わされてしまうこともあります。

結果として、あなたが住宅ローンを抱えている事情などは十分に考慮されず、「これでどうやって生活しろと…」と呻くような金額の支払いを、不貞をした相手のために続けなければならない状況に陥ることも珍しくないのです。

結論:最悪の事態を避けるために、今すべきこと

ここまで見てきたように、妻の浮気が発覚したからといって、裁判所に判断を委ねれば自動的にあなたが救済される、ということはまずありません。

「理不尽だ!」と感じるかもしれませんが、この法的な現実を前提に行動しなければ、取り返しのつかない不利益を被ることになります。

では、どうすればいいのか。最も重要なのは、感情的に「離婚だ!」と切り出す前に、戦略を立てることです。

離婚するのか、するとしてもどのような条件を目指すのか。裁判で争うのではなく、交渉で有利な条件を引き出すことはできないか。そのためには、どのタイミングで、どのような証拠を使うべきか。

こうした戦略を一人で立てるのは困難です。妻の浮気に気づいたら、まずは一度、離婚問題に詳しい弁護士に相談し、ご自身の取りうる最善の選択肢は何かを冷静に検討することをお勧めします。

弁護士野口真寿実

【弁護士紹介】
弁護士 野口真寿実

離婚部門主任弁護士。
豊富な経験と実績であなたの再出発を力強くサポートします。言いにくいことも代弁し、依頼者に寄り添い二人三脚で解決へ。

相談可能場所:二俣川金沢文庫青葉台新横浜茅ヶ崎

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