離婚原因の実務運用の問題点(長期間の別居)

離婚一般

現状の離婚に関する実務の運用の問題点を指摘します。
問題がある以上、将来的には変化することが期待されます。問題点を指摘していかないと変化は起こりません。また、思わず早期に変化の利益を享受できるかもしれません。納得がいった方は是非、主張していってください。

離婚原因について、現状の裁判所の一般的な運用について、問題点は多々ありますが、今回は離婚原因において、長期間の別居が離婚原因とされることに伴う問題点です。

長期間(およそ3年から5年)の別居は、裁判上の離婚原因の典型的なもののひとつです。離婚原因を定めた民法には「長期間の別居」とは書いていないのですが、民法のその他の離婚原因のひとつとして扱われています。

そして、性格の不一致の場合のように、法律上認められている離婚原因が存在しないけれど、どうしても離婚したい場合は、とにかく別居して、別居期間の経過を待って(場合によっては待たずに)、離婚を求めていくことになります。

つまり、離婚原因がないけど離婚したい場合の代替手段として、別居が用いられているということです。

確かに、結婚は契約ですから理由のない離婚を安易に認めるわけにはいきません。反面で、一方がどうしても離婚したいといってどうにもならない状況なのに、「法律上の離婚原因が存在しない」として延々と離婚を認めないというのも不都合が多いです。
そのバランスとして、別居が長期化したら、どちらが悪いということもなく離婚を認める。この考え方には一定の合理性があるといえます。

しかし、その結果、弊害が生まれています。
そのひとつが子連れ別居の強行です。妻がどうしても離婚したいが、さしたる離婚原因がない場合、そして夫が円満な別居に同意してくれる見通しがない場合、別居を強行することになります。そして、親権も事実上連れて行った者勝ちという実務が定着していますので、親権を取りたければ妻は子どもと一緒に突然別居を強行するのが合理的、ということになります。
これは、今後の離婚協議をこじらせる上、子どもの生活状況の安定という観点からしても危険この上ないといえます。

しかし、このような行為を妻に事実上促しているのは、別居することによって離婚原因が発生するという実務といえます。

また、本来は夫婦の相互協力義務であるべき婚姻費用要求する権利を、一方的に相互協力義務を放棄した妻に認め、離婚を拒否する夫に事実上の制裁を加えるという現状の婚姻費用の濫用的な運用も、別居を離婚原因とすることに根があるといえます。

現状、別居を離婚原因とすることに一定の合理性があることは否定できませんので、別居を離婚原因とすることに反対するものではありません。ただ、その弊害をきちんと認識したうえで、その弊害を最小限にするべく、一方的な子連れ別居についてはハーグ条約の趣旨に即し、夫から異議があった場合は即座に元の生活場所に子どもを戻す。一方的な別居をした場合には、婚姻費用の請求を認めない、という程度のバランスのとれた運用が望まれます。

弁護士 小林 芳郎
マイタウン法律事務所の所長弁護士。男性の離婚事件を数多く扱う。

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