離婚においては、複数の問題がからむことが多く、一概にどのような戦略がよいとは言い切れることは多くありません。とはいえ、一つ一つの問題についての、基本戦略を明確にしておくことは、総合的な方針を立てる上では、必須のこととなります。
ここでは養育費の基本戦略を書きます。
養育費については、いわゆる養育費の算定表というものがあり、子どもの年齢と人数、父母それぞれの収入によって概ねの額が定まるようになっています。
そして、母親は当然、いろいろ理屈をつけて算定表の上限を要求してきます。また、調停等であれば、「子どものためのお金だから」という反論しにくいプレッシャーを浴びせられて、また毎月少しの差だからと妥協してしまいたくもなります。
しかし、少額の差とはいえ、将来にわたる支払いですので、総額でいうとかなりの額になります。そして、決めた養育費の額は、払わなければならない最低額、仮にその額の支払いを怠った場合、給料差し押さえ等をされかねない(裁判所で養育費を決めた場合)基本額です。
そのような額は、多少の想定外の事態が起きても確実に支払うことができる金額にしておくことが肝要です。思ったより余裕があれば、決めた養育費に加算して多めに払ってあげればよいのです。
今後の税制の変更、会社からの手当ての廃止等、思わぬ事態で毎月数万円の手取り額の変動は起こりえます。大幅な収入減があれば、養育費の変更を求めることができますが、おそらくは税制の変更や会社からの手当ての変更程度だと難しい場合も多いといえます。仮に、養育費変更ができる状況でも、相手が同意しなえれば、こちらから裁判所に申し立てをして、裁判所に認めてもらう必要があります。
以上から、「子どものためのお金だから」というプレッシャーに対しては、「今回決めるのは、どんなことがあっても必ず支払わなければならない額。余裕があれば、多めに払う」といって対抗していく必要があります。
なお、養育費は決めた後も、相手の再婚による養子縁組や就職、こちらの再婚や減収・失職等によって、減額や免除を求めることができますので、離婚後の元妻の状況の把握等にも気を配ることをお勧めします。
弁護士 川邊 優喜
マイタウン法律事務所の所属弁護士。男性の離婚事件を数多く扱う。