最高裁が、婚姻費用・養育費の算定表を見直し、より高額化するようです。
現在、婚姻費用や養育費については、裁判官の研究グループが作成した、いわゆる算定表に基づいて額を決めるのが通常です。
正直、男側からすると、この額を支払うのはかなりきついことが多いです。
というのは、実際には住宅ローンや、家族全員で生活することを前提にした家賃の負担を強いられた上で、そのことをあまり考慮せずに算定表を用いることになるからです。
ところが、日弁連が算定表の額が低すぎるということで、より高額な算定表案を公表しました。
もっとも、正直言って日弁連の算定表案の額は支払うことは困難なので、実務ではそれほど通用していませんでした。
ところが、裁判所まで高額化をするということです。
時事ドットコムの記事で
「あるベテラン裁判官は日弁連の新算定表については「引き上げありき。払える額でない」と疑問を呈する。」
とあったとおり、これ以上高額化したら、失踪せざるを得ない人がでるのではないかと思います。
養育費が過小であれば、生活保護なりの救済手段がありますが、過大な養育費をもとに給料を差し押さえられてしまった場合、法律上有効な救済手段がほとんどないからです。
高額化の理屈に理由がないわけではありません。
ただ、多少の余裕があるから、住宅ローンや家賃の二重負担をさせられた上でも何とか算定表の額を工面することができていたという現実を直視すべきでしょう。
また、収入の減少が生じても「多少の変動の範囲」として養育費減額の要因にしないことができたのも、多少余裕があったからと言えます。きつきつの養育費をはじめから決めてしまえば、収入の減少が生じたとたんに支払い困難になり、しかも養育費は強度の差押さえ権限と、破産免責という逃げ道がないことから、完全に追い詰められることになりかねません。
少なくとも高額化するにあたっては
・収入から夫婦共同生活によって負担せざるを得なくなった債務(住宅ローンや家賃)を優先的に控除し、その残額を収入とみるべきこと
・収入の減少等が生じた場合には、収入減少時から養育費減額の効果を認めるべきこと
・自ら同居義務、相互協力義務を放棄して、一方的に別居を敢行した妻には婚姻費用請求権を認めないこと
という点が前提状況として必要だろうと思います。
弁護士 柳下 明生
マイタウン法律事務所離婚主任弁護士。男性の離婚事件を数多く扱う。