ある日突然、家庭裁判所から「婚姻費用分担調停事件」と書かれた期日通知書が届く。これは、離婚に向けた話し合いが本格化する、非常に重要なサインです。
婚姻費用とは
婚姻費用(略称「コンピ」)とは、別居中の妻子の生活費のことをいいます。
家庭裁判所から婚姻費用分担調停事件の通知が届くということは、「妻があなたに対して、別居中の妻と子の生活費を払えと請求してきた」ということになります。
Q. 指定された期日に出席できない場合は?
調停の初回期日は、裁判所の都合で一方的に指定されています。仕事などで都合が悪いのは当然あり得ることです。
ですので、もし都合が悪い場合は、通知書に記載されている裁判所の担当部署に電話で連絡し、「指定された期日には出席できない」旨を伝えましょう。電話の際に、その次の期日はいつがよいかという予定調整の話がでるかもしれません。
Q. 婚姻費用調停への正しい対応方法は?
では、婚姻費用分担調停については、どのような対応をするのがよいでしょうか?
無視したくなる気持ちもあると思いますが、日程を調整して出席することをおすすめします。相場観を踏まえながら対応可能な額を決めていくには、調停手続にのって決めていったほうがうまくいく場合が多いです。
なぜ出席した方がいいのか
婚姻費用分担調停は、調停手続といって裁判所での話し合い手続きです。ですから、双方の話し合いにより合意ができなければ終了します。その場合は、裁判所による審判手続になるのが通常です。審判手続では、当事者の合意なしに、裁判所が一方的に決めます。
婚姻費用については、婚姻費用算定表というものによって定型化されていて、夫婦それぞれの収入、子どもの年齢と人数によって概ねの額が決まります。ですから、放置していても、最終的には裁判所が妥当な額を決めてくれると思うかもしれません。
しかし、そこには大きな落とし穴があります。
想定外の高額請求と「未払い分の一括払い」のリスク
審判で決まる金額は、「婚姻費用算定表」という相場に基づいていますが、あなたの知らないところで不利な事情が考慮され、想定外の金額になる可能性があります。
さらに、審判では「調停を申し立てられた月からの未払い分」を一括で支払うよう命じられるのが通常です(例:1月に調停申立 → 6月に審判で月10万円と決定 → 6ヶ月分の60万円を一括で支払え、と命じられる。)。
調停での話し合いであれば、支払い開始時期や金額について、柔軟な合意ができる可能性があります。
「安易な約束」が将来の自分を苦しめるリスク
逆に、慣れない手続きの中で冷静さを失い、「いい人に見せよう」「早く終わらせたい」といった気持ちから、相場より高額な婚姻費用を安易に約束してしまうケースも少なくありません。
一度合意してしまうと、後から「やっぱり払えない」と覆すのは非常に困難です。そして、この不利な合意は、その後の財産分与や養育費など、離婚全体の条件交渉で極めて不利な状況を招くことになります。
まずは弁護士に相談を
「冷静に対応する自信がない」「相手に丸め込まれてしまいそう」 もし少しでもそう感じるなら、調停期日に一人で臨む前に、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に依頼すれば、
- あなたの状況における、婚姻費用の適正な相場が分かる
- 不利な条件で合意してしまわないよう、あなたの代理人として冷静に交渉してくれる
- 今後の離婚手続き全体を見据えた、最適な対応をアドバイスしてくれる
高額な婚姻費用を約束してしまった後では、弁護士ができることも限られてしまいます。手遅れになる前に、まずは一度専門家の意見を聞いてみてください。